ことば

君であるように


三十歳になった。
毎年夏は憂鬱になる。何故だか理由はわからないのだけれど、
夏は鬱鬱と過ごし、寒くなるとそれに飽きて開き直り、人生こんなものかと年末を迎える。

今年は7月の終わりに気が狂いそうな混乱状態に陥って、
ぷっつりと線を切ってしまった。
7月の終わりに、いや正確にはもっと以前から当惑し
悩んでいた事象について、結論を下したのだ。

1.耐え忍び対処法を考えうまく乗り越えていくこと。
2.流れに身を任せて穏やかな波を待つこと。
3.見切りをつけて新しい場所へ向かうこと。
何かに行き当たった際には、よくよく考えて選択肢から最善のものを選ぶ。
後悔のないように。この後好い方向へ転がれるように。

私は1を選べず2で疲弊して、3 を選んだ。
それもただの3じゃなかった。
結果として私が選んだ3は、期待してして支えてくれた人を裏切り、
積み上げたものを崩してしまった。

それでも、毎晩泣き続けて苦しみを吐き出し、段々とおかしくなっていく自分、
諦めて小さくなっていく自分が本当に壊れないように踏みとどまることで精一杯で、
1になんて戻れそうにもなかった私は、些細なことで糸を断ち切って、
振り返らずにそこを飛び出した。

受け入れ難いもの、常識人として認めなければならないもの、欲しい生活。
判断の材料は沢山あるように見えたけれど、嵐が過ぎた今、
とてもシンプルな答えに到達した。

僕が僕であるために。
勝ち続けなきゃならない。

尾崎豊の有名な一曲だ。
私が私であるために、私は選んだ。生き続けることを。
期限も距離も定まらないゴールに向かって、
心を死なせたまま生活していくことには耐えられない。
私として走っていない抜け殻の状態でゴールへ辿り着いても、
きっと私は消えてしまいたくなる。
生きることを勝ち負けで語るのは好きじゃない。
でも自分が自分でない人生で、何かに勝てるわけがない。


言葉を選び理解に努め、目的と認識と論理展開を出来るだけ共有し、共に歩く。
それが仕事だと思っていた。
私は考え、そして尋ねたが、不確かでも暫定的に形を成して
とりあえず現状を保ち続けることが大事らしかった。

他人同士。私は相手の認識や経験を知らない。そしてここで行う仕事についても詳細を知らない。
だから言葉を使う。理解して寄り添い、一緒に仕事をするために。
そういう前提を当たり前だと思っていたが、違うようだった。

一度も会話に登場していない仕組みや作業について
確認をせずに進めていくことは、思い込みでの作業を推奨する。
エスパーじゃあるまいし、とても危険だ。
職人のように言葉に加えて感覚が作業において比重を占めるなら未だしも、
オフィス街のビルでパソコンと書類に向き合い、制度と規則、
互いの認識に照らしあわせていく仕事で、何故言葉が使われないのか。
確認をしようとすると叱責される場面の多かったこと。
私たちは人間で、他人で、仕事仲間で、始まったばかりの業務で、
曖昧なルールブックを渡され、言葉と想像力を使うことを禁止された。
私はそれを受け入れられなかった。

始まりが異なっても、言葉を使って認識を重なり合わせ、整えていけばいい。
でもそれではいけないらしい。出発点から相手と並走しなければ、理解の悪い奴と言われる。
出発点が何処かすら伝えられていないというのに。

私は言葉を使って認識の真ん中へ向かう人間で、
想像力と言葉を禁じられることは武器を奪われると同じことだった。
戦えない奴は去るしかない。

戦うことを放棄し、切りつけらる痛みを感じないようになった。
それはもう終わりの始まりだった。

積み上げたものを失った悲しみはまだまだずっと胸にある。
それと同時に、想像力を欠いたまま言葉も尽くすことが出来ない場所を
出られたことには、正直ほっとしている。

私は言葉を言葉で世界を捉え、言葉で人と繋がり、言葉で自分を表現する。
そう、

僕が僕であるために
勝ち続けなきゃならない
正しいものは何なのか
それがこの胸にわかるまで


自分の正しさをずっと押し通してはいけないだろう。
でも私が信じるものを抱えて、私とし行きていきたい。
あなた方の正しさを主張するのなら、私は私で考え続けて生きていく。

正しいものは何なのか
それがこの胸にわかるまで




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移動

帰京


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自分


こうして文章を書き、自分の頭の中の世界を映し出して他人に知らせる行為に
夢を見たあとで、それでも理解してくれる他人は一握りだと思い出し、
意思伝達と表現の難しさに悶えて、一段落書き終えることもままならない自分を
消し去ってしまいたくなる。

言葉を使って表現するということは、私に歓びと絶望をもたらす。
まるで生きることそのものもように。

私は私の世界を持っているが、私の世界が私だけのものであるか、
私だけで構成されているのかは断言できないし、する必要もないと思っている。

ここに生きている自分は血脈と何かしらの真理から派生した人間という個体で、
関係性のなかに存在しているからだ。

しかし、個体であることは絶対的に孤独である。
関係性の中の他人に照らされて、自分の輪郭が浮かび上がるときは、
より一層の孤独を感じる。

私は他人と何かを共有することで救われたことがない。
私が愛するものは私の世界で特定の輝きを放つが、
他人の世界で同じように輝いているかどうか知る由もない。

私たちの眼は同じ世界を見ることができない。だから、私は愛するものを
共有しようとは思わない。愛するものについて語らうことはできても、
分かち合うことが出来ない。

刹那の快楽を置き石にして、延長戦をやり過ごしているだけ。

この快楽にしても、語らいのなかの言葉遊びを楽しんでいるだけ。
言葉による自傷あるいは自慰を繰り返して、喜怒哀楽の仮面をつける。

しかしながらその言葉は私自身であり、失った時間のうえにぽつりぽつりと
置かれていき、私を定義づける。

祝福と呪いを享けている。私は言葉によって生き存え、苦悩する。
言葉は武器で慰めで狂喜で凶器で狂気なのだ。

恥を知りなさい。
公平でありなさい。
慎みなさい。
良き隣人でありなさい。
幸福を与えなさい。
間違い探しをしなさい。

不幸にはならないようにね。

何故生きる。
何故此処にいる。
何故私は私なのか。


逃れようとして還っていく。言葉に。

白紙の前で空になって抵抗してみても逃げられない。

「私」という言葉から。

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ひとつ

もう嘘はつかない。
他人の笑顔をあてにするのもやめる。

喜ぶべきことも悲しむべきことも
過ぎてしまえば昔話。

私の言葉は私だけのもので
幸福のために言葉を尽くすことはない。
関係性の曖昧さに紛れ込んだ戯れ言は屑かごへ投げ捨てる。

私は私で私を生きる。
もう君を呼んだりしない。
選ぶのは私で決めるのも私。

虚しい言葉で笑うくらいなら
独りで真の言葉を連ね続ける。

お別れだ。

虚しい夢と臆病者に。

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大人は判ってくれない

小学生の頃の話。

担任教師は教育熱心で強い信念の持ち主で、素直で明るく頭の良い生徒が好きだった。
私はそこそこ勉強ができるほうだったので、それはそれは贔屓され、可愛がられていた。
それ故に孤独だったので、教室では一人で絵ばかり描いていた。

どこで仕入れてきたのか解らない教育論を持ち出して、
深夜までかかる宿題をやらせては廊下に貼り出し、満足気に笑う教師だった。
自信をつけさせるためにと、自由に遊び思考する時間を奪ってまで、
あらゆるコンクールに参加させた。


できない生徒は徹底的に責められ、「中学生になったらもっと大変だ」と
必ず呪いをかけていた。実際、魔女のような風貌をしていた。

あれは真冬の木曜日だった。

我儘で、いつも誰かが手伝ってくれるのを
待っている女の子がいた。教室では黙っていても、
親経由で自分を主張し、ささいな誤解が大きくなり、
その度に誰かが納得しないまま謝る。
そういうことが続いて、皆その子に近づかなくなっていた。

前の日、彼女の靴に画鋲が入れられていて、靴下に着いた血を見た親から
教師に連絡がいき、授業を潰して、犯人探しと裁判が行われた。

あっけなく犯人は名乗り出て詫びたが、教師は泣きながら
「こうなったのはあなたたち全員の責任です。
 今から○○さんのお家に行って、謝ってきなさい」
そう叫んで職員室に引きこもった。

確かに画鋲を使って傷つけたことは許されない行為だし、
彼女への不満をそういう形でしか伝えられなかったことは
私たちが悪いと思った。

しかし、私は「謝りに行け」と言われて行く気がしなかった。
それは被害者の彼女のためでも、ご両親のためでもなく、
教師のパフォーマンスのためだと思ったからだ。

外は吹雪いていて、すでに暗くなっていた。

まだ本格的な反抗期を迎えていない可愛い子供たちは、素直に、言われるがまま、
先生を教室へ戻すために、吹雪の中を彼女の家まで謝りに行った。

私はというと、
吹雪の彼方に消えて行く皆を、窓から見送っていた。

皆がすっかり見えなくなると、彼女とご家族への
謝罪の手紙を書いた。


正確には全員−1だが、全員が直接謝りに行ったということで
ご家族は納得し、教師も職員室から戻ってきた。

教師は私に何も言わなかった。教室で独り時間割を眺めていた私に、
何も言わなかった。いつも可愛がっている生徒が自分の指示に
従わなかったことについて、何も言わなかった。

何も言えなかったのだと思う。

大人の言うことを鵜呑みにしない。

そう誓った。あれは卒業前の冬。

私は12歳だった。


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甘い雨

皆様にご報告があります。
転職しました!
何回目の転職だよ!って自分で先に突っ込んでおきます。
でも今回は事情があるのですよ。
決して私の根性のなさが理由ではありません。

で。
求職活動をしていると、自ずと人生を振り返るし、
これからについても考えます。

今の職場に来て、色々イロイロいろいろありました。

皆優しくて、幸せでした。

昔の職場では先輩にロクに仕事を教えてもらえず、手探りで頑張って、
うまくいかなくて、ぶっ壊れました。

他の人がいじめられているような状況をどうすることもできず、
罪悪感に勝手に弱っていって辞めたこともありました。

でも、ここでは何とかやってこれました。
皆さんのおかげです。
ありがとうございました。

仕事以外で一番の収穫は、人に見てもらうために文章を書くようになったこと。

これだ!という文章を書けたとき、世界を表現することができたとき、
自分は幸せになれる。

薄々気づいていたけれど、その豆電球のような喜びや希望を、
じっと眺めるだけで、それ以上のことはしませんでした。

そんななか、向かいの席に座っていたかなり変わった先輩
(後にぶっ飛んだ永遠の少年であることが判明)。


好奇心に駆られて、先輩にちょっかいを出し、
紆余曲折ありつつ可愛がってもらい、
ここのページを先輩に見せて、ZINEに参加させてもらって、
一歩を踏み出すことができました。


砂の中に光る金を見つけたみたいに、
世界をすくったら、素敵な人たちと巡り会えました。

自分と他人を認めることを学んだ一年でした。

ただ私はもともと甘ったれでわがままで、自分本位の人間。
これでいいのかな?という疑問もありつつ、
居心地の良さというか楽しさに甘えていたところもあり。

気持ち的にケジメをつけなくてはいけないなーという部分を
曖昧にしていたので、それをはっきりさせました。

私の気持ちのハナシなので、そうしたからと言って何かが特に
変わることはありません。でも気持ちの整理に付き合ってくれた方、
いきなりの話で驚かれたと思いますが、前々から考えていたのですよ。
言わなかったのは、何かが変わるのが恐かったから。


秋雨が降ったり止んだり。


季節が変わっていくときに、
心も変わっていきます。


甘い季節を通り過ぎて、次はどうしようか?

人生何があるかわかりません。

関係者の皆様、お付き合い願います。

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秘密の花園

幼い頃、家族でとある施設に宿泊した。
詳細は覚えていないが、季節を終えた薔薇の生垣と、常に青い暗さがあった風景を覚えている。

父、母、兄、私の家族4人が通された部屋は、4人で使うには広すぎて、
整然と10くらい置かれたやけに細い白いベッドは、遺体安置所のそれのような不気味さがあった。

そこが火事で燃えてしまったことを父親から聞き、青い闇を纏った館の最期を想像して、
不謹慎だが妙に納得してしまった。

北国の青い冬の深夜、赤く燃え上がった炎。


私と兄はどこかへ泊まりに出かけると二人で遊びにだされ、必ず喧嘩をしていたが、
あそこでは兄も私も静かだった。
招待された側として少しはしゃいでみたけれど、
館と花のない薔薇と、そして静寂が、じっと私たちの気配に耳を澄ましているようで、
そのうち押し黙り、両親のもとへ戻っていった。

あそこはもうこの世に存在しない。

あの場所自体が死後の世界に逝ってしまった。

だが、私には、死後の世界こそが最もふさわしいような気がするのだ。

青く暗い夏休み。

あの静けさのなかには、何がいたのだろう。

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ミステリー

<ある事件の少女に寄せて>

想像力で幸せを補うには

毎日は虚しすぎる

生まれ堕ちた世界のルールにのっとって

子どもとして生きている

私は幸せを知らない 不幸も知らない

喜びも悲しみも知らない

「それが幸せだよ」って 誰かが教えてくれたらいいのに


美しいと感じることさえ

好きだ 嫌いだと感じることさえ 疑わしくて煩わしい

私は何も知らなくて 何も判断できない

否定も肯定も目の前で 一瞬のうちに煙となって消える

記憶を辿っても 何も重要なことはなかった気がする


神様でも 運でも 何でもいい

私の意味を決めてほしい

生きる意味と 死ぬ意味を


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輪郭

温度を感じるように
君のやさしさを感じた

たいせつなものを教えあう時間こそが
たいせつになっていく

季節を感じるように
だんだんとふたりの時間に慣れていった

君の笑いなれていない笑顔口癖
お気に入りの服

季節が変わるように
良いことも悪いこともやってきて
君の気持ちも僕の気持ちも
季節に負けないくらい揺らめいて移ろい


それでも時おり
冬の澄んだ空気で冴え渡る星の光や
水彩画のような春の朝焼けや
夏の萌える緑から零れる日射しや
すべてが静かになっていく枯れた秋の草原に

心を寄せている僕らを見つけて

何度でも再会して
何度でも別れて
何度でも君を感じるんだ


世界は美しい
なぜなら君がいたから

ことばでも
沈黙でも

そばにいても
いなくても

君から流れる風に
吹かれている

出逢ったときから
いやきっと
生まれたときから
そして死ぬまでずっと

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純粋

紺色の雲と灰色の空を背景にして

君は冷えた空気のなかに独り佇み

頬を紅潮させ

夜明け前の街の気配について語り

そしてこれから昇る太陽の光の

雲間から射し込む

あの光のように言葉を紡ぎたいと

そう 言った

明けない夜はないが

終わりが見えない苦しみに己を浪費した真夜中や


答えのない問いに屁理屈や詭弁を積み上げては崩した真夜中が


暗闇に光とともに生まれ
明滅した言の葉が


無意味な僕らの葛藤が

朝を世界にもたらしたのだと

時々僕は思う。


君が雲間から射す光になるなら

僕はまだ暗い西の空になって

夜毎君に照らされよう


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