« ミステリー | トップページ | 小説 »

秘密の花園

幼い頃、家族でとある施設に宿泊した。
詳細は覚えていないが、季節を終えた薔薇の生垣と、常に青い暗さがあった風景を覚えている。

父、母、兄、私の家族4人が通された部屋は、4人で使うには広すぎて、
整然と10くらい置かれたやけに細い白いベッドは、遺体安置所のそれのような不気味さがあった。

そこが火事で燃えてしまったことを父親から聞き、青い闇を纏った館の最期を想像して、
不謹慎だが妙に納得してしまった。

北国の青い冬の深夜、赤く燃え上がった炎。


私と兄はどこかへ泊まりに出かけると二人で遊びにだされ、必ず喧嘩をしていたが、
あそこでは兄も私も静かだった。
招待された側として少しはしゃいでみたけれど、
館と花のない薔薇と、そして静寂が、じっと私たちの気配に耳を澄ましているようで、
そのうち押し黙り、両親のもとへ戻っていった。

あそこはもうこの世に存在しない。

あの場所自体が死後の世界に逝ってしまった。

だが、私には、死後の世界こそが最もふさわしいような気がするのだ。

青く暗い夏休み。

あの静けさのなかには、何がいたのだろう。

|

« ミステリー | トップページ | 小説 »

ことば」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/230533/45422295

この記事へのトラックバック一覧です: 秘密の花園:

« ミステリー | トップページ | 小説 »